―――この男が俺の家族を殺し男・・・・殺してやる・・・・。
仲間に下がるように指示を出す。この男は俺が殺らないと気が済まない。
風を切るような音。俺は、右手で持った剣を真っ直ぐに王の喉元に向けた。剣がシャンデリアの光を反射して光り輝く。
その行動を見て、王は俺に尋ねた。
「君は自分のやっていることが分かっているかね?」
馬鹿か? それはこっちのセリフだ。自分で国の奴らを手にかけたのを忘れたのか?
「やはり、分かっておらんようだな・・・・」
ふざけるな!!! お前の・・・・お前の所為で・・・・!!!
「どうして・・・君がこんなことを・・・・」
うるさい・・・うるさい!!!
―――何故そんな目で俺を見るんだ!!
俺は家族を・・・・家族を・・・・!!!
その時、突然俺の視界に黒い人影が入った。
―――敵か!!?
王に向けていた剣を黒い人影に向け斬りつける。咄嗟の判断。
赤い斑点が俺の服に広がった。赤い彼岸花が咲く。
何回かそれを繰り返し、黒い人影は視界から消え失せた。俺の黒い服が赤黒くなったが。
どうせあの男の部下だろう――見る必要なんてない。俺は王を正面から見据えた。
それを王は悲しそうに見ていた。とても――悲しそうに。
「本当に君は・・・・」
うるさい黙れお前の言葉なんて聞きたくない失せろ俺の前から失せろ消えろ死ね死ね死ね死ね死ね死ね――。
俺は王の座っている玉座に向かって走り、斬る。
銀色の閃光がきらめき――。
ごろり――。
悲哀な顔をした王の首が絨毯の上に転がる。俺の足元にまで転がってきた。最後までこの顔だった。赤い液体が噴水のように湧き上がる。
はぁ・・・・はぁ・・・。死ん、だ・・・・? これで、終わった、のか・・・・?
―――終わった・・・・終わったんだ!!
狂った王は死んだ。これで国はもう恐怖しなくて済んだんだ!!
俺は王の首を見、優越感に浸る。家族、そして友を殺した王はこの世から消えた。
今まで願っていたものが叶ったんだ!!
俺は瞬きするのも忘れ、憎き王の首を目で舐めまわす。やがて口元に恍惚の笑みを湛えた。
この国にいる者全てが望んでいたことを俺がやり遂げたんだ!! そう思うと手が震え、喜びが溢れ、感情が収まらなかった。
「狂った話だわ」
どこからか声が聞こえる。女の声に俺は我に返った。