「教えてあげる。あなたは今より前にここに訪れた。自分自身の罪を他人になすりつける為に」
―――俺は罪なんて起こしていない。
この女、長い間監禁されて頭が狂ったんだな・・・・可哀想な女だ。
「私は見たもの。あなたがここの兵士を虐殺するのを、この目で」
嘘言え!!
「私は嘘をついていないわ。あなたはこの城の兵士を殺し、王の所為にしたのよ!
あなたは『家族を王に殺された』と言っていたわね?そもそもそれが間違っている」
―――あぁ。この少女は、ここまで王の被害を受けていたのか・・・。
俺は可哀想な姫の話に付き合ってやることにした。
ずっと話し相手がいなかったのだ、自分の作った世界を話しているのかもしれない。話すことが出来ない人形のように――。
へぇ・・・どこが間違っているんだ?
「やっと真面目に聞くようになったわね――話を続けるわ。
あなたは自分で自分の家族を殺した。だけど、ばれたら不味いと思ったんでしょう――あなたはこの城に訪れ、兵士を殺し、王に罪を着せた」
ふーん。推理としては面白いな・・・でも何で俺が家族を殺したって分かるんだ?
そう俺が尋ねると、姫は悲しみの色を湛えた。
「本当に分かってないのね・・・」
な、何だよ・・・俺が何を分かっていないんだよ。
姫の言動に俺は動揺する。俺は何かまずいこと言ったのか・・・?
「私の顔をよく見て」
今まで節目がちだった姫は、すっと顔を上げる。
小さな顔。海のように深い青色の瞳。整った高い鼻。肌は雪みたいに白く、薄汚れた金色の長い髪・・・・。
この人形のような少女は――
―――誰・・・だ?
「まだ分からないのね・・・。仕方ないわ、これを見て」
姫は突然くるりと後ろを向く。
「これを見ても分からない?」
・・・・・!!